阿蘇は「火の国」熊本のシンボルであるだけでなく、広大なカルデラを有する活火山、火口を体感できる火山として、世界的にも有名です。阿蘇五岳を中心に広がるカルデラとこれを取り巻く外輪山は、自然の雄大な景観を誇っていますが、更に特徴的なことは、カルデラ内に古代から人が住み、定住の歴史は古く、大自然と人間の共生、協働の結果、阿蘇独特の風土、文化、歴史をつくってきました。
阿蘇には、年々二千万人に及ぶ観光客が訪れ、観光立県を標榜する熊本の観光資源となっていますが、一方では、2016年4月の熊本地震で実感させられた熊本の地形、地質のみなもとでもあります。
阿蘇地域は、すでに、ジオパーク、農業遺産として世界的な評価を得ていますが、阿蘇について私たちの知見、認識を深める更なる努力が必要です。阿蘇は、火山学や地質学等の研究対象としても特異な地位を占めていますが、阿蘇の自然及び社会を対象として展開されている知的活動は、自然科学、人文・社会科学などはもとより、文芸、詩歌、美術、音楽、民俗、神話や宗教など文化・歴史の広範な領域に及んでいます。私たちは、阿蘇の全体像を科学的に解明し、自然環境の保全と環境整備を進め、阿蘇に係る芸術文化活動を高め、観光、農業その他の資源の有効活用を図るとともに、非常の災害に備えるためにも、これらすべての分野の研究者・関係者の交流と協働が不可欠であると考えています。
阿蘇に関して知的な関心を持ち活動する人々すべての参加を得て、その総力を結集して「阿蘇学」というべきものを創造したいとの思いから、「阿蘇学会」の創設を提唱するものです。この資料をご参照のうえ、幅広い分野の多くの皆様にご参加頂きますようお願いいたします。
阿蘇学会設立準備委員会 委員長 谷 口 功